能装束の虫干し
中野の武田太加志記念能楽振興会で、能装束の虫干し見学会。能衣装は汗まみれになることもあるが、風干しをするだけだそうだ。立派な衣装がところ狭しとロープに掛けられたり、床に広げられたりしている。
「どうぞかき分けて中に入って下さい」と言われる。高価そうな衣装に手を触れても良いのかと思うが、化粧品や整髪料がつく方が困るので、かき分けて下さいとのこと。
能衣装の種類、どのような場合につけるのか、詳しく説明して下さる。実際に手にとって重さを体験させていただき、見学者に着せけで下さる。
傷みの激しいものも多く、自分たちで補修している。もちろん新しく作ることもあるそうだが、数百万から一千万を超えるらしい。
能舞台にも一面に広げられている。
実演を交えて詳しい解説が続く。
別の部屋では衣装の繕いをする能楽師の方々がいる。
かずらや持ち物なども虫干しされている。
最後にこれら全てが納められている倉庫へ。案外コンパクトに収納されている。
面も色々見せていただき、一人一人に面をつけるといかに視野が狭まるか体験させていただく。
面をつけると極端に視野が狭まるので、最初は動きが小さくなってしまうそうだ。そのうち舞台から落ちてしまうこともあり、そうすると「おめでとう」と言われるそうだ。大きく動けるようになったという意味だそうだ。そうやって身体で覚えるが、薪能はじめ能楽専門でない場所では舞台の大きさも様々で、また床の滑らかさもなくすり足がしにくいなど、ご苦労があるようだ。
惜しみなく能楽の世界を教えていただき、感動的だった。
能楽師は舞うだけでなく謡、後見も同じように務めるとのこと。謡など長時間正座していればとうぜん痺れ、わからないように痺れを治す方法もお尋ねしたら、快く教えてくださった。両足首を深く重ねるそうで、正座の後立つとヨロヨロしてしまう私は、とても興味があった。今度やってみようとは思うが、あそこまで深く組めるか自信なし。
能楽を伝え、広めようという意欲も強く感じられた。